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通関実務対策 申告書問題の解き方(価格按分の問題・少額判断基準価格の算出)

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申告書の問題で多く出てくる価格按分の問題。
申告書鉄板問題集のゼロからの申告書(以下、ゼロ申)にもよく出題されています。
ところでゼロ申の価格按分で解説されている

{\displaystyle 申告価格=仕入書価格\times\dfrac{申告価格総額}{仕入書価格総額}\times適用為替レート}

の意味は理解しているでしょうか?
ゼロ申ではこの計算式を公式化していますが、何故このような式が導かれているかが全く書かれていません。
最初取り敢えず暗記して乗り切ろうとしたのですが、ちょっとパターンを変えられるとどう使うんだっけ?と訳が分からなくなりました。
結局自力で気づいたのですが、ネットにも解説がなかったのでいつか書きたいなーと思ってました。
恐らく皆さん躓いている箇所だと思いますが、実は簡単な数式で導けます。
あとゼロ申をもっていない人は買いましょう。
通関実務必須の問題集です。

公式の意味(比率版)

 突然ですが皆さん

10は5の何倍ですか?

2倍ですね。簡単です、小学生でも解けます。
実は価格按分の公式と問われている内容は一緒です。


そもそもこの公式(適用為替レートは省略)

申告価格=仕入書価格\times\dfrac{申告価格総額}{仕入書価格総額}

別の見方をすると

申告価格=仕入書価格\times x

 
※x=\dfrac{申告価格総額}{仕入書価格総額}

と置き換えられます。

式の意味としては"仕入書価格をx倍すると申告価格になる"です。
("申告価格は仕入書価格をx倍した価格になる"とも言い換えられる)

今度はx

※x=\dfrac{申告価格総額}{仕入書価格総額}

について考えてみましょう。
さっきの”10は5の何倍ですか?”の2倍は皆さん頭の中で10\div5=2で求めたはずです。
これを式本来の意味の"申告価格は仕入書価格の何倍ですか?”であてはめると10は申告価格、5は仕入書価格、2はxです。
なのでx=申告価格\div仕入書価格となります。
ここでのxは比率を表しており、仕入書価格を"1"とした場合、申告価格は何倍か?という意味なので、申告価格総額\div仕入書価格総額(全体がわからないと比率が出せない→申告価格、仕入書価格の総額で比率を計算)となります。

凄い回りくどい説明でしたが、要は仕入書価格をx倍すると申告価格になるという比率x申告価格総額\div仕入書価格総額で求めているだけです。

 公式の意味(比例式版)

比例式からもこの公式を導き出せます。
こちらの方が機械的に導き出せます。
申告価格と仕入書価格の関係を比例式で表すと

申告価格:仕入書価格=申告価格総額:仕入書価格総額

となります。
比例式の性質である内項の積=外項の積を利用すると

申告価格\times仕入書価格総額=仕入書価格\times申告価格総額

両辺に\times\dfrac{1}{仕入書価格総額}をすると

申告価格=仕入書価格\times\dfrac{申告価格総額}{仕入書価格総額}

が導き出せます。

公式の使い方

比例式の

申告価格:仕入書価格=申告価格総額:仕入書価格総額

の形さえ覚えておけば、

申告価格=仕入書価格\times\dfrac{申告価格総額}{仕入書価格総額}\times適用為替レート

という公式を覚えなくて済みます。

例題:輸出申告書の価格按分・費用按分するパターン

ゼロ申の輸出申告書で価格按分するパターン等で

例題にあるような
仕入書価格(EXW):US$2,000
FOB総額:US$31,722
EXW総額:US$31,100
為替レート:99円/US$

の場合、上記の比例式に当てはめると

 

申告価格:US$2,000(EXW)=US$31,722:US$31,100

 
申告価格=US$2,000(EXW)\times\dfrac{US$31,722}{US$31,100}

最後に為替レートを乗算してあげると申告価格=201,960円となります。

もちろん、輸入申告書の費用按分する場合も使えます。

少額判断基準価格の算出

少額判断基準についても比例式を使って算出できます。
ゼロ申では少額判断基準価格の公式は

少額判断基準=20万円\times\dfrac{仕入書価格総額}{申告価格総額}\div適用為替レート

とあります。

この公式を求めてみましょう。
まず、少額判断基準と申告価格、仕入書価格の関係を比例式で考えてみます。
比例式で表す為に、少額判断基準を申告価格と仕入書価格それぞれで分けた場合を考えます。

申告価格の少額判断基準を少額判断基準(申告建値)、

仕入書価格の少額判断基準を少額判断基準(仕入建値)
で表す*1とすると、
この時の少額判断基準と申告価格、仕入書価格の関係は

少額判断基準(申告建値):少額判断基準(仕入建値)=申告価格総額:仕入書価格総額

となります。
また、少額判断基準(申告建値)は輸出入申告どちらの場合でも20万円なので

20万円(申告建値):少額判断基準(仕入建値)=申告価格総額:仕入書価格総額

と表せます。
先ほどと同じように比例式の性質を利用すると

少額判断基準(仕入建値)\times申告価格総額=20万円(申告建値)\times仕入書価格総額

両辺に\times\dfrac{1}{申告価格総額}をすると

少額判断基準(仕入建値)=20万円(申告建値)\times\dfrac{仕入書価格総額}{申告価格総額}

が導けます。

例題:輸入申告の少額判断基準価格の算出

例題として輸入申告書の少額判断基準を求めてみましょう。
仕入書価格総額:US$70,359(FOB
申告価格総額:US$74,881.77(CIF
為替レート:108円/US$
とした時の少額判断基準は比例式で表すと
輸入申告の場合、少額判断基準は建値CIFの20万円なので

200,000円(申告建値=CIF):少額判断基準(仕入建値=FOB)=US$74,881.77(CIF):US$70,359(FOB)

になります。
これらを式変形し、ドル換算させると

少額判断基準(FOB)=200,000円(CIF)\times\dfrac{US$70,359(FOB)}{US$74,881.77(CIF)}\div108円/US$

=US$1,740

となります。

もちろんこの考え方で輸出申告書の少額判断基準も求められます。
輸出申告書の場合は、少額判断基準(申告建値)を建値FOBの20万円に変えるだけです。
また、この式も要するに仕入書の少額判断基準価格は申告少額判断基準価格20万円の何倍ですかと聞いているだけなんですよね。

まとめ

理解してないで公式のみ暗記していると価格按分と少額判断基準価格の公式とで申告価格総額と仕入書価格総額がテレコになってしまっているのでわけわからんことになります。式の意味を理解すると結構簡単です。
価格按分、少額判断基準価格の算出は公式を暗記せず比例式から導き出しましょう!

*1:建値=インコタームズ

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